中空糸ノズルの開発編
人口腎臓用の血液透析膜となる中空糸の製造工程で用いる、中空糸ノズルの開発でのお話です。
腎不全患者の方は腎臓機能の低下により、老廃物が体内に蓄積して尿毒症を起こします。
その老廃物の排泄機能を代行するのが人口腎臓で、一般に血液透析法と呼ばれ、分離膜を用いて血液中の老廃物を除去します。
その分離膜の素材として用いられるのが、中が空洞となった繊維、中空糸と呼ばれるものです。
中空糸は内径200~300ミクロンの細い繊維で、これを1万~2万本束ねて両端を固め、透明なプラスチックの筒の中に入れたものが血液透析装置です。 これは独自の技術力の成功で精密加工技術の確立が可能となりました。
中空糸ノズルは、一般の紡糸工程で溶融した高分子を繊維状にして取り出す口金の先端に、もうひとつ穴があいたノズルを想像して頂ければわかりやすいかと思います。

ただ、口で言うのは簡単なのですが、
孔径の問題、
穴の深さと紡糸される繊維の性能の関係、
孔内の表面処理の精度の確保など、
クリアすべきテーマは多く、特にもっと小さく、もっと深くという、小孔径ノズルへの対応が難しく、
小さくは極細の中空糸の内径の確保が、深くは成形された糸の繊維軸方向への安定性の確保が問題となってきます。
普通、ノズルの穴はボール盤で開けようとしますが、これが市販のものでは0.1のドリルで1mmぐらいの深さしかなかなか確保できません。
これを3mmから4mm程度までに伸ばすために、専用ドリルの自社開発から始め、中空糸ノズルの製品が完成しました。
現在でも小口径の中空糸ノズルにかけては、山陽精機は絶対の自信を持っています。
2012-04-20 14:48:12
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石油から誘導された有機の低分子量化合物である原料(モノマー)を重合して繊維形成能を有する高分子を合成し、紡糸して繊維化したのが合成繊維です。
山陽精機は、この合成高分子の溶融から加圧押し出し、冷却、巻き取りに至る合成繊維の製造プロセスを、個性豊かな技術で支える繊維製造機械メーカーです。
その製品は、インターレースノズルやエアーセパレートローラーといった主要パーツ類のみならず、混練機や冷却筒などの各種製造装置類、さらに合繊製造ライン全体へと広がっています。
私たちの日常生活に密着した素材であるとともに、広大な裾野を持つ基幹産業のひとつでもある繊維。
繊維に関連した「お・も・し・ろ・話」でご説明します。
ポリマーチップを1本の糸に変身させる編
ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンなど、私たちの暮らしの周辺はおびただしい類の合繊繊維であふれていますが、それが実際どのようにして作られているかとなると、目にする機会のない一般の人にはなかなか理解しにくい世界ではないでしょうか。
もっともポピュラーな合成繊維の製造法である’溶融紡糸法‘で説明してみましょう。
溶融紡糸の場合、普通、繊維メーカーの工場は3層構造になっています。
1、溶融紡糸の工程が、原料の高分子を溶融し押し出す工程、
2、押し出したものを繊維状に凝固させる工程、
3、凝固または固定させた繊維状固体を強度の高い繊維に変身させる延伸・巻取り工程、
この3つに大別されます。
もう少し細部を見てみると、押し出し機から押し出された状態の繊維は数十本の細い原糸で、これが引き取り工程で1つに束ねられ1本の糸として巻き取られていくのがわかります。
この糸が、織り、編まれ、染色・加工、縫製を経て衣料となっていきます。何の変哲もないポリマーのチップが1本の糸に変身していく光景は、現代の科学の魔法を見ているようでもあります。
繊維工場では、1ポジションと呼ばれる単位でこれらの糸4~8本を巻き取ります。
これが何十ポジションと並び、目にも止まらぬスピードで回っている様はなかなか壮観でもあります。
2012-04-17 21:18:41
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